開催日:2024年9月2日〜22日

開催場所:インドネシア スラウェシ島

主催:sandglow

PHOTO & TEXT:竹村吉史(YOSHIFUMI TAKEMURA)

5日かけてわずか7kmを走破する超ハードルート

 ホテルでのスタートセレモニーを終え、一団はトレイルのスタート地点であるバルップル村に到着。村はずれの農道の分岐を曲がると、雨に洗掘された立て溝が無数にあるヒルクライムが始まり、先導の我々チームからトレイルに踏み入った。ところがのっけから深いV字溝の洗礼を受け、ウインチなどをつかって少しずつ前進する事となり、車両に過大な負荷が掛かり続けた。その結果、700mほど進んだ地点でディスカバリーのリアデフギアが粉砕し、加えてチームリーダーのウインチにも問題が生じたため先導を後続チームに譲ることになった。ウインチはメカニカルなトラブルだったため、何とか動かせるレベルまで復旧。ディスカバリーはチームメンバーが山を下り、街で中古のデフギアを見つけて既に修理が始まっている。夕方には雨が降り始めて気温が下がり、修理を終えた我々の体温を奪っていく。赤道近くの南国で育ったインドネシアのメンバー達に取っては、思いもよらぬ寒さだったようだ。コンボイの最後尾チームになった我々は、先行チームに追いついた所で日没を迎えてキャンプする事になった。安全の面から、日没後はレスキューを伴う作業はしないよう規則が定められているからだ。たしかに夜間のレスキューは、思いもよらぬ事故が発生しがちなため、とても効果的な規則といえる。テントに落ちる雨音は、疲労した身体にはただの子守歌、寒さなど感じることも無く瞬く間に深い眠りにつくことができた。

 シングルバーナーの乾いた燃焼音で目を覚ますと、メンバー達はすでに朝食の準備を始めていた。まだ6時前、寒くて目が覚めてしまったようだ。朝食後、先行グループに動く気配が無いため徒歩で偵察に向かうと、遠方からタイヤが泥岩を蹴る音とウインチの唸る音が聞こえてきた。雨で泥濘む坂道を注意深く下ると、高低差10mほどの谷で、ほぼ垂直の崖をウインチで登るランドローバーが見えてきた。崖を登るとそこは山肌になっており、ルートは左に抜けている。そのためウインチアンカーは複数取られ、登り切ったところにはスナッチブロックが3つ複雑なラインワークによって固定されていた。このようなウインチングセクションにアタックするため、ツインモーターなどの強力ウインチを装着している車が多いが、フル装備のランドローバーは思いのほか重く、ダブルラインにトラクションを加えてもスムーズに上る車両はいない。逆に消費電力の過多などで電装系トラブルが多発。数台のランドローバーは宙づり状態のまま修理を余儀なくされ、その間はコンボイの動きも完全停滞してしまう。

 プルプルトレイルは標高を上げるに従って路面状況が変わり、いつしか滑りやすい石灰砂岩のカルスト地形になっていた。表面はツルツルでとても滑りやすく、履いてきたパラディウムブーツのブロックも食い込まない。しかしアタック車のマッドタイヤに掘られると、突然砂岩が砕けて砂になり、トラクションがかからなくなる。後続車はウインチを使って前進し、コドライバーはスコップなどで砂岩の角を落として歩くなど、コンボイを前進させるために消費する時間が増してきた。フト振り向くと下界に広大なジャングルが広がり、遅々としながらも我々が高度を上げて来たことを実感する。日没近くになるとじわじわと寒さが増し、昨晩同様身体が冷えてくる。それもそのはず高度計をみると標高2,100mを超えていたのだ。凸凹で滑りやすい石灰砂岩の上にシングルコットテントを立て、前夜以上の冷えを想定してジャンパーを着てサマーシュラフに潜り込んで寝た。翌朝目覚めると、すでにほとんどのメンバーは起きており、みんな6℃まで下がった外気温に耐えられず眠れない夜を過ごしたという。体力を消費し、ぐっすり眠ることもままならず、想像以上に疲弊したプルプルトレイルだったが、5日目の夜中にはコンボイはプルプル村に到着することができた。

スラウェシ・トリビュートの最難関「プルプルトレイル」に向かうスターティングセレモニーが、1988年のキャメルトロフィーで使われたミシリアナ・トラジャで開催された。

トラジャ族の舟形屋根家屋トンコナンが立ち並ぶタナ・トラジャ市郊外を走るディスカバリー。最高峰のアラビカコーヒーを生産するトラジャは、独特な文化を持つ秘境。

プルプルトレイル最大の山場になったのは、高低差10mほどの谷超え。80度以上の角度は崖にしか見えないが、参加者達は恐れる事なく着々とウインチの準備を進めてゆく。

ウインチやバンパー、キャリアなどの重装備に加え、予備燃料や水、キャンプ用品などで3トンほどになる重い車体を引き上げるのは、ハイパワーなツインモーターウインチだが、ダブルラインで牽いたとしても容易な事ではない。トラクションを与えたところで、濡れた泥土がそれを拒む。

ジャングルではアンカー位置に制約が多いため、このような複雑なケーブリングになることもある。

クタクタになりながら後続車の到着を待つメンバー達は、プルプルトレイルで一番の功労者だろう。

横転すると思いきや、予想外に粘るディスカバリー。確実に固定した低重心パッキングが功を奏する。

メディカルチームは、担架が収まるようリアオーバーハングを延長したメディックカーで同行した。

夕陽を浴びながらバルップからの悪路を上るローバーシリーズ3が、逞しいポーターに見えてくる。

プルプルトレイルで悪戦苦闘する我々の横を、子供達が鶏を運んで行った。一体誰が頼んだのだろう?