2006年 HISTORIC4x4GRAFFITI掲載

走破性へのコダワリはジープ以上

三菱のジープと同時期に誕生した、同じ1 / 4トンの4 × 4 ながら
パトロールがその後辿った道は、あまりにも違いがあった
警察予備隊の入札に敗れ、民間向けにもエンジンが大きすぎた
日本製品なのに日本ではその姿を見ることは稀になってしまった

日本で開発・生産されたのにそのほとんどが輸出された

 パトロールは、トヨタ・ジープBJ、三菱ウイリスCJ3Bとともに。1950年に米軍と警察予備隊からから受けた1/4トンと3/4トンの4×4製造についての打診に応じて開発された。開発当初より民生用にも販売することを考慮して「パトロール」と命名され、翌’51年には国家警察立ち会いの運行試験に参加。ジープに勝る性能を発揮した。
 

 しかし、結局三菱ジープが米軍経由で供給されることになったため、パトロールはあてにしていた大口の需要を失ってしまう。また、エンジン容量が民間向けには大きすぎたため、一部が警察等に使われたものの、そのほとんどが輸出されることになってしまったのだ。

MB/GPW のそれとよく似た形状のウインドゥフレーム。ガラス部は前方へスイングアウトできる。

ゴツい脚まわりだが、乗り心地は思いのほかソフト。図太いトルクのおかげで扱いやすく、楽しいオフローディングが味わえる。

MBによく似たフロントグリルだが、スリットは縦ではなく横向き。直6エンジンを収めるため、ボンネットはジープよりずっと長い。

ジープによく似たスタイルだがエンジンの違いが大きく表れる

 生産台数が少なく、全くと言っていいほど個人ユーザーのないパトロール4W60型。1955年製造とコーションプレートに記された取材車両は、国内でレストアされた貴重な1台と言える。
 

 この年式だから、てっきり踏み込み式かセルボタン式のスターターかと思ったら、イグニッションキーを余分に回すだけでスターターは回った。6Vなのにやけに元気に回ると思ったら、何と圧縮比は6.2しかないという。エンジンは鉄板1枚の隔たりしかなく、エキゾーストもシンプルなのに、やけに静かで、パワーも充分に保っていた。
 

 外観はエンジンフードが低くてウイリスMBに似ているが、着座姿勢はジープのようなステアリングを抱える姿勢とは異なり、よりゆとりのあるシートから、少しは腕を伸ばして運転できる。
 

 ジープより2気筒分長いエンジンフードにより、前方の視界はあまり良くない。しかもよく見れば、同じ6気筒でも、トヨタBJはラジエターグリルがフロントタイヤの前端より奥にあるのに対して、パトロールは逆。ホイールベースが2200mmと、BJより200mm短いからだ。もっとも、フロントバンパーが短いので、アプローチアングルはそれよりに大きい。

 ホイールベースは短いが、B Jがフラットな腹であるのに対し、パトロールはトランスファーのあたりが少しフレームの下に出ているので一長一短だ。もちろん、フレーム下の突出度はジープのようにひどくない。

設備も資材も資金もない中で、走破性にはとことんこだわったことが伝わる

センタースルー式なので、リアデフはアクスルの中央にある。フレーム後端のメンバーの組み方は牽引を想定したものだ。

エアクリーナーはオイルバス式でキャブレターも単純そのもの。キャブ下のマニホールドにはバイメタル利用のバルブが見える。

NT85型6気筒サイドバルブエンジン。82.5mmのボアに対して、114.3mmというロングストロークで、なんと圧縮比は6.3。

インパネ周り。中央の四角いコンビネーションメーターが優雅な印象。助手席のグラブバーはウインドゥフレームにつく。

太いトルクと良く動く脚 開発者の情熱が伝わる4×4

 舗装路を走らせて感じるのは、この年代の4×4に共通した乗り心地の良さ。リーフスプリングは45mmと幅の狭いものを10枚前後重ねたもので、見た目はクッションが悪そうに思えるが、負荷がかかると実に良く動く。オフロードでは、ギアボックスの1〜2速を使いながら、サイドバルブ6気筒の低速トルクを充分に活かし切る走りが楽しめた。
 

パトロールは後にサファリと名を変え、幾度ものモデルチェンジを経て現在に至る。外観では共通点はないものの、トルクの太い6気筒の大排気量エンジンと、接地性の高いサスペンションの組み合わせという基本的な考え方は、この4W60型から最新のサファリにまで踏襲されている。


 4W60型が作られた時代は、現在のように豊かな日本ではなかった。メーカーは設備も資材も資金もない状況で、開発を進めたことだろう。今の4×4から見れば武骨あるいは不細工なスタイルに、その痕跡が見られる。しかし、クロスカントリーカーとして最も優先すべき路外での走破性については、限られた技術や素材の制限の中で、実に工夫を凝らしていたのだ。

前に倒すと持ち上がる運転席の下には6Vのバッテリーが収まっている。助手席の下には燃料タンクが設置される。

コンビメーター右の大きなレバーはアポロ式ウインカーのスイッチ。インパネ両端の丸いメーターは電圧と電流計。

フロントは幅の狭いリーフが9枚重ねられ、さらにスタビライザーを兼ねた補助スプリングが備わる。リアのリーフは11枚。

SPECIFICATIONS

  • 車名/年式:日産パトロール(4W60)/1955年
  • 全長×全幅×全高:3,650 × 1,740 × 1,720mm
  • ホイールベース:2,200mm
  • トレッド:前/1,400mm 後/1,280mm
  • 最低地上高:210mm
  • 車両重量:1,500kg
  • 乗車定員:2名
  • 形式:水冷直列6気筒SV ガソリン
  • 総排気量:3,670cc
  • 内径×行程:82.5 × 114.3mm
  • 圧縮比:6.2:1
  • 最高出力: 85PS/1,600rpm
  • 最大トルク: 24.0kgm/3,500rpm
  • 燃料: ガソリン
  • トランスミッション形式: 4速MT
  • 変速比: 1 速: 7.13/ 2 速: 4.11/ 3 速: 2.04/ 4 速: 1.00/ 後退: 8.46
  • 駆動方式::パートタイム4 × 4
  • 副変速比:1.00
  • 最終減速比: 4.09
  • ステアリング形式: ウォーム&ローラー
  • サスペンション 前: リジッドアクスル式リーフスプリング 
  • サスペンション 後: リジッドアクスル式リーフスプリング
  • 主ブレーキ:  前ドラム 後ドラム
  • タイヤサイズ: 6.50-16 6PR