2006年 HISTORIC4x4GRAFFITI掲載

正しい道を歩んだベーシックパジェロ

日本の国内経済がバブルに浮かれているころ
質実剛健であるはずの4 × 4 までもが豪華装備で肥満化していた
そんな中、自身を見失うことなく走っていたのがパジェロ・スーパーXLだ

スーパーXLがスポーティーなのは優れた重量配分とハイパワーが理由

 スーパーエクシード、VXリミテッド、○○スペシャルなど、この上ない頂点を指し示すエンブレムが与えられた4×4が街を闊歩した’80年代後半。世はバブル経済の真っ只中で、誰もが自分を見失い、必要とするものではなく最上級のモノを買い求めた時代だった。もちろんクルマは市場の声を反映させて作られるから、過剰装備で豪華な重いモデルがカタログを賑わすこととなった。

 質実剛健でスポーティーなモデルとして生まれたはずのパジェロもまた同じ道を辿り、3リッターV6エンジンを搭載したロングホイールベースのスーパーエクシードさえも、重量増から出足が悪いと評価されていた。

 そんなパジェロだったが、比較的軽量なショートモデルは、それなりにパジェロらしいスポーティーさが保たれていた。取材車両のスーパーXLは、確かにサスペンションシートやパワーステアリング、パワーウインドゥなどが装備されているものの、ドライバー中心の装備設定になっているため、過剰と呼ぶほどの装備内容ではない。そのため、前述のスーパーエクシードよりも車両重量が250kgも軽くなっていた。

 スーパーXLに与えられた心臓は6G72型2972cc V6ガソリンエンジンで、当時のデボネアに搭載されていたユニットと同一だった。150PSというスペックはその時代の国産クロカン4×4としてはトップクラスの数値で、1620 という比較的軽量なスーパーXLを余裕で走らせることができた。

 エンジンは前軸より後方にマウントされたフロント・ミッドシップの形式が採られている。よって、走行中に不快なピッチングはほとんど感じられない。特にショートホイールベースモデルは、前後軸の重量配分が50対50で、とても前後バランスが良い4×4として仕上げられていた。

 スーパーXLに乗って感動するのは、パワフルなエンジンやバランスの良い重量配分だけではない。特筆すべきは、6G72型エンジンの静粛性だ。アイドリングではその息使いすら聞こえないため、信号待ちで後方にディーゼルトラックなどが来ると、そのエンジン音が気になるほど。それだけ6G72型エンジンの静粛性は高く、握ったステアリング、身体を任せたシートから、わずかなエンジンの脈動が伝わってくるだけだった。

パリ- ダカマシンのイメージを色濃く感じさせるスーパーXL

 スーパーXLのサスペンションは、リアにコイルスプリングが奢られ、トレーリングアームとラテラルロッドで位置決めされたアクスルは、高速コーナーでも横剛性が高く、信頼感があった。フロントを支えるトーションバースプリングは強化されており、バネ常数は2.46kg/mmでキャンバストップを除く他のパジェロ・シリーズより0.26kg/mm 高い。また、リアのディファレンシャルケースの中にはLSDも標準装備されていた。

 このような性格付けからみれば、スーパーXLがクロカン走行よりハイスピード走行に照準を定めたモデルであることが分かる。試しにダート路を飛ばしてみたが、この脚は路面にしっかりと追従してくれる。そのため、マシンが暴れてステアリング操作が困難になることもなく、安心してアクセルペダルを踏み込むことができた。ただしそれと引き替えに、舗装路の継ぎ目を越えたとき、ゴツゴツとした振動を乗員に伝えるという場面もみられた。

 クルマは、走る・曲がるの能力以上に停まる性能が大切となるが、パジェロの4輪ディスクブレーキは単に強力というだけでなく、コントローラブルだった。パニックブレーキでも尻振りを起こすことがなく、好感が持てるフィーリングといえる。

 ディーゼルエンジン全盛の中で生まれたスーパーXL。仕方のないことだが、ガソリン車であるがために販売台数が伸びなかったのは残念だ。

パジェロのコンペティションマシン「スポーツターボ」の後
ホットモデルを引き継いだのがスーパーXL

少々硬めではあるが、オフロードを走らせればバネレートの高さも納得できる。良くできた脚のため、着地後のおつりも少なく安定している。

当時はコレでも高級に感じられたから不思議だ。 スクエアなデザインの中に、 様々なスイッチやメーター類が機能的に配置されている。

傾斜計や高度計など、雰囲気を盛り上げるためのアクセサリーメーターの標準装備は賛否両論だった。

リアシート下には、温水式リアヒーターが埋め込まれている。 十分なカロリーを持っていたため、 冬でも車内はポカポカ。

サスペンションシートの機能を止める際は、シート高を3段階のうち好みの高さでで固定することができた。

ドライバーズシートに採用されたサスペンションシートは、体重調整、3段階シート高調整、シートスライドが可能。

6G72型エンジンには、M/Tが組み合わされなかった。スポーティーな味付けだけに、設定を望む声もあった。

今でこそ150PSという数値は非力に感じられるが、当時、この6G72型エンジンのパワーを超えていたのはランクルFJ62Gの155PSだけだった。

リアのコイルスプリング式サスペンションは、スーパーXLだけではなく、ワゴンモデル全車に与えられたユニットだ。

SPORTS TURBO/L041G L系のホットモデルといえば、’84年に登場したスポーツターボだろう。軽量なキャンパストップと145PSの2リッターガソリンターボは元気が良かった。

EXCEED/L049GW パジェロもフル装備+本皮シート装着でラグジュアリー路線に向かった。後にワイドモデルも登場。写真は’ 87年ミッドルーフワゴンのエクシード

SPECIFICATIONS

  • 車名/年式: パジェロ メタルトップワゴン スーパーXL (L141GW)/1989 年
  • 全長×全幅×全高: 3,960 × 1,680 × 1,860mm
  • ホイールベース: 2,350mm
  • トレッド: 前/1,400mm 後/1,415mm
  • 最低地上高: 195mm
  • 車両重量: 1,620kg
  • 乗車定員: 4名
  • 形式: 水冷V 型6気筒OHC ガソリン
  • 総排気量: 2,972cc
  • 内径×行程: 91.1 × 76.0mm
  • 圧縮比:  8.9:1
  • 最高出力: 150PS/5,000rpm
  • 最大トルク: 23.5kgm/2,500rpm
  • 燃料/タンク容量: 無鉛レギュラーガソリン/75L
  • トランスミッション形式: 4速AT
  • 駆動方式: パートタイム4 × 4
  • 副変速比:  Hi : 1.000 Lo : 1.925
  • 最終減速比: 4.625
  • ステアリング形式: ボール・ナット(パワーアシスト付き)
  • サスペンション 前: マクファーソンストラット式トーションバースプリング 
  • サスペンション 後: リジッドアクスル式コイルスプリング
  • 主ブレーキ:  前: ベンチレーテッドディスク 後: ソリッドディスク
  • タイヤサイズ: 215SR15
  • 車両本体価格: 2,397,000円(当時)