2006年 HISTORIC4x4GRAFFITI掲載

時代を先取りした小さなアメリカン

アメリカン4x4といえば、誰もが想像するフルサイズ・ワゴン
’60年代当時もトラックベースの大型4X4が闊歩していたが
そこに一石を投じたのが、この初代ブロンコだったが…
小さなアメヨンは、時代を先取りしすぎていたのかもしれない

小型軽量な4×4という
エポックメイキングなクルマ

 全長3863 、全幅1748という小さなボディー。それまでのアメリカン4×4が持っていた、武骨で大きいというイメージとは一線を画した、画期的なモデル。それが、初代ブロンコだった。

 小型で軽量なボディーを持つブロンコは、4×4と乗用車の融合という点でも、エポックメイキングなクルマとして迎えられ、1965年のデビューと同時に好評を博した。豊富なオプション群を用意して好みの仕様にすることができた「フルチョイス・システム」も、当時の若者の心をつかんだようだ。

 ボディータイプは、フルオープンでドア無しの「ロードスター」、シングルキャビンのピックアップスタイルとした「ユーティリティー」、そして後部にキャビンと一体になった樹脂製トップを被せた「ワゴン」の3タイプをラインナップしていた。

 取材車両は、1974年式のワゴンだ。本来、ボディーを彩っていたストライプは入っていないが、荷室までトリムを施したレンジャー・パッケージと呼ばれる豪華仕様だ。

 ロードクリアランスは216を確保しているが、キャビンによじ登るようなことはなく、まるで乗用車のように乗り込むことができる。メインの燃料タンクをドライバーズシート下に収めているにも関わらず、シート座面位置を低く抑え、乗り込みやすさに貢献しているのだ。

 ボディーサイズが小さい割りに、室内は意外なほど広く感じられる。ガラスエリアが広く、ほぼ垂直に切り立ったボディーサイドのデザインによって車室容積がかなり大きく取られているおかげだ。また、ドアの厚みを抑えた設計も、室内を広くしている要因のひとつ。しかし、ドアの開閉をおこなっても、「安っぽさ」は感じられなかった。

 ドライバーズシートに座り、前方を眺めてみると、デザイン上のアクセントにもなっているボンネット両端の隆起が、車両感覚を掴みやすくしていることに気づく。さらにボンネット前端がやや下がっていることで、ボディー直前の路面までしっかり見渡すことができるのも、ブロンコの優れたボディーデザインによるものだ。小さい上に車両感覚をつかみやすいデザインによって、街中からクロスカントリー走行まで走りやすいクルマに仕上げられている。

スピードメーターはステアリングの左手に配置。径の大きなメーターだが、少々見にくいレイアウトだ。

床から生えているのはトランスファーレバー。DANA20 型トランスファーは噛み合わせが悪いのか切り替えに少々手間が要る。

極めてシンプルなインパネ。上部にクラッシュパッドが装着されているものの、豪華パッケージでも鉄板はむき出しのまま。

コンパクト・ボディーは新時代を拓いたが、同時に早すぎた登場とも言えた。

リジッド+コイルの組み合わせも
当時は画期的だった

 コラム式3速ATのレバーをDレンジにシフトし、アクセルを軽く踏むだけで5リッターV8がズ太いトルクでクルマを前進させる。1.5トンの小さなボディーでは、ゆっくり走らせていても、充分すぎるほどのパワー感を味わうことができる。

 一方、この初代ブロンコの画期的なポイントは、スタイルやコンパクトさだけではなかった。当時の量産クロスカントリー4×4としては初めて、リジッドアクスルにコイルスプリングを組み合わせたサスペンションを採用しているのだ。

 オフロードでのリジッドアクスルの優位性はそのままに、オンロードでの乗り心地や、路面追従性を高めるために、フロントのみコイルスプリングとしている。

 今や珍しくもない手段だが、4 × 4 には頑丈なリーフが第一、と考えられていた当時としては非常に画期的な出来事だったのだ。

 4×4が「特殊な道具」から、パーソナル・ビークルへと転換するきっかけとなったブロンコは、後にライバルとして台頭してきたシボレー・ブレイザーに対抗すべく、1977年にはフルモデルチェンジによってフルサイズ化を遂げる。明らかに違うクルマへと変貌した二代目ブロンコに対し、初代ブロンコが「アーリー・ブロンコ」と呼ばれるようになったのは、その後のこと。先進性に溢れたコンパクト4X4が登場するには、時代が早かったということなのだろう。

フロントにコイルスプリングを採用した脚まわりは非常にしなやかで、抜群の路面追従性を見せる。安心してクロウリングを楽しめるサスペンションだ。

フロントサスペンションは、リジッドアクスルにコイルスプリングを組み合わせる。リーディングアームとパナールロッドで位置を決める3リンクタイプだ。

リアサスペンションは、コンベンショナルなリジッド+リーフスプリング。荷重によってバネレートが変化するプログレッシブタイプのスプリングを採用する。

スモールブロックと呼ばれる小型車用5リッターV8 エンジン。最高出力は139HP、最大トルクは32.8kgm を発揮する。

左サイドのリアフェンダーにある給油口。左がメインタンク用、右がサブタンク用となり、切り替えは車内のコックで行う。

リアゲートは上下開き式。取材車両。レンジャー・パッケージでは荷室にまでカーペットが敷き詰められる。

フロントシートにヘッドレストはなく、サイズもやや控えめ。アームレスト付きのリアシートは、幅の制約から2人掛けとなっている。

テールゲートを開いた状態でも走行できるように、ナンバープレートはスプリング内蔵の可倒式を採用している。

SPECIFICATIONS

  • 車名/年式: フォード・ブロンコ/1974年
  • 全長×全幅×全高: 3,863 × 1,748 × 1,783mm
  • ホイールベース: 2,337mm
  • トレッド: 前/1,448mm 後/1,448mm
  • 最低地上高: 216mm
  • 車両総重量: 1,551kg
  • 乗車定員: 4名
  • エンジン形式: 水冷V型8気筒OHV
  • 総排気量: 4,949cc
  • 内径×行程: 101.6 × 76.2mm
  • 圧縮比:  8.6 :1
  • 最高出力: 139HP/4,000rpm
  • 最大トルク: 32.8kgm/2,200rpm
  • 燃料/タンク容量: ガソリン/46.2 + 28.4L
  • トランスミッション形式: 3速AT
  • 変速比:  1 速: 2.46/2 速: 1.46/3 速: 1.00/ 後退: 2.20
  • 駆動方式: パートタイム4 × 4
  • 副変速比:  Hi : 1.00 Lo : 2.46
  • 最終減速比: 4.11
  • ステアリング形式: ボール・ナット式
  • サスペンション 前: リジッドアクスル式コイルスプリング 
  • サスペンション 後: リジッドアクスル式リーフスプリング
  • 主ブレーキ:  前: ドラム 後: ドラム
  • タイヤサイズ: 7.00-15 6PR
  • 車両価格: US$ 4,542 〜5,067.25 (当時)