2006年 HISTORIC4x4GRAFFITI掲載

おとなしくて力持ち

4.2リッターディーゼルと4輪コイルのサスペンション
このふたつがY60サファリという巨木の幹となった
硬派な本格オフローダーなのにハイウェイも気持ちよい
優れたトータルバランスでサファリは独自の道を行く

ボディー以外は完全に刷新  オンとオフの両性能を両立

 サファリのルーツは1951年に登場したパトロール4W60。働くクルマとして本格的に量産が始まったのは’60年登場のG60B型パトロールから。そして官公庁や企業の作業車としての地味な立場から一躍パーソナルカーへの転身を遂げたのが、’80年にサファリという名で登場した160系だった。ここで紹介するY60系サファリは’87年からの4代目。部分的に160系のパーツを流用しながらも、大幅に改良されたフルモデルチェンジ版である。

 160系からの最大の進化は、前後リジッドのアクスルをコイルで支えるサスペンションに変わったことだった。このコイルリジッドのスタイルは、すでにランドクルーザーワゴン(LJ71)で採用されてはいたが、それはコイルの長所が乗り心地以外に活かされたものではなかった。これに対し、サファリではオンロードでの乗り心地と操縦安定性、そしてオフロードでの走破性を両立させた、オフロードタイプの4×4としては理想的なものだった。

 エンジンは160系から大幅に排気量アップとなった4.2リッターディーゼルのTD
42型を採用。従来からの低回転域での粘りの強さにさらに磨きがかかった。

 しかしながら、ボディーだけは160系をベースにしたもので室内の広さなど仕様はそのままとし、拡がったトレッドに対応させてオーバーフェンダーが追加された。

 「古くて新しい」それがY60系サファリを端的に表す言葉だろう。

オンロードで速度を保って走るとエンジンノイズも気にならない。もともとメカニカルノイズが小さいことと、排気音がマフラーで有効に抑えられているからだろう。

4.2リッターの直6にしてはコンパクトなTD42型。シリンダーヘッドまわりではロッカーアームにアルミ材を使ったりして軽量化も図られている。

10.5R15の太いタイヤを履く上級グレードでは、タイヤのグリップ力と安定性が格段に増すようで、ダートを飛ばしても姿勢を乱すことがない

ボディーに直接マウントされるサイドステップは、床下に張り出さず、対地障害角にも影響しない。Y60サファリにはこうした細かい配慮が随所に見られる。

本格4 × 4でもジェントルな振る舞い
ディーゼルノイズも気にならない

アイドリングでも悪路を走破 トルクフルだがガサツさがない

 TD42型となってトルクに粘りが増したディーゼルエンジンは、同時期のランドクルーザー60系が搭載していた4リッターの2H型ディーゼルをもしのぐ排気量。額面馬力ではやや劣るが、実力は排気量の差に見合う内容だった。もちろん他車の4気筒ディーゼルよりはるかにトルクフルで、かといってトラック用のもののようなガサツさはまったくない。先代160系のSD33型の扱いやすさが、そのままスケールアップしたフィーリングだ。

 このようなエンジンなら、サファリのよく伸びる脚を生かして積極的にオフロードを攻めてみたい。トランスファーのローレンジは低く、このディーゼルならアイドリングでも尻がつきそうなギャップも越えられる。逆にハイレンジのトップギアでも、信号の多い市街地から郊外のワインディングまでに対応できる。

 ノイズが小さいことも、エンジンの大きな特徴だ。特にアイドリング時に車体の後方にいても、エンジンが回っているかどうか分からないほどに排気音は小さい。ボンネットの脇に立ってもノイズは高くなく不快に感じない。室内も同様に静かで、回転を上げていっても耳障りな音質でないのは助かる。

 サファリはランドクルーザーと並ぶ日本を代表する本格4x4でありながら、走りは実にジェントルでスパルタンな雰囲気は皆無。大きな船だからこそ快適ということか。

高級化、高価格化が進む中で、直6・2.8リッターディーゼルターボを積む廉価グレード“スピリット”も登場。軽快な走りが魅力だった。

高級4 × 4路線を歩むことになるサファリには、シリンダーブロックを共有する4.2リッターのガソリンやターボディーゼルを積むモデルも登場した。

トップギアでどこまでも巡航可  オールマイティーなディーゼル

 日産の4×4はオンロードでのスムーズさに配慮されているが、このサファリも例外ではない。特に高速道路での滑らかな走りは乗用車並みで、アップダウンの多い中央高速でも交通の流れが良ければトップギアのまま巡航できる。ディーゼルといえばターボがつきもので、発進加速ではもう少し機敏さを望みたいところだが、長い登坂路でも速度を落とさずに登っていく様を見ると、これで充分と思えてしまう。

 そんなディーゼルで高速コーナーを攻めると、意外に痛快だ。速度を保ちながら回ってもロールは少なく、ステアリングも安定していて不安を覚えない。しかもコーナーを抜けながらの加速もピタッと安定していて、足腰とエンジンのマッチングの良さがうかがえる。エンジンのトルクについても優秀で、トップギアのままコーナーに進入したとは思えないほどの機敏な振る舞いを見せる。

 さて、後に快適装備を満載し、高級4×4への道を歩むことになるY60サファリ。3ナンバーワゴンの追加、ガソリンエンジンやターボディーゼルの追加設定、スケールダウンのディーゼルを積む廉価グレード「スピリット」の登場など、ラインナップも充実した。ただし、ボディーについてはエクステリアもインテリアも、基本的にはデビュー当時のままのスタイルを貫いた。

頑丈なボックス構造のフレームがボディーの前後を貫く。フレームに沿って延びるワイヤーは、スタビ解除装置のもの。

日産やスバルと縁の深い栃木富士製オートマチックハブ。“オート” と“常時ロック” を工具を用いて選択する。オート機能は他車のヤワなものとは一線を画す、作動が確実で頑強なもの。

サスペンションの柔軟性では国産車随一。そう簡単にはタイヤを浮かさないため、トラクションが効いて前進する力を長く発揮できる。リアサスのスタビ解除機能もオフロード走行ではたいへん有効だ。

日産らしい四角四面のインパネだが、 これでも先代 160 系に比べればカドがとれた。 大きなメーターパネルが見やすい。

左から、トランスファー、5速MT、PTO ウインチの各レバー。ウインチの駆動力もトランスファーから取り出した。

小柄な人にとって乗降は楽ではなかったが、フロアと敷居 (シル) の段差がなく、 無理のない姿勢で乗り込めた。

Y60サファリの先代となる160系サファリ。それまでの作業車イメージを払拭し、パーソナルカーとして強烈にアピール。「パトロール」の国内向けに「サファリ」という名をつけたのも、このモデルからだ。

2ドアショートと4ドアロングのふたつのボディーバリエーションにディーゼルエンジンとマニュアルトランスミッションのみという組み合わせは、Y60 になってからもしばらく続いた。

エンジンとサスペンションがベストマッチ
オンからオフまでまさにオールマイティー

SPECIFICATIONS

  • 車名/年式: 日産サファリ ハードトップAD (VRY60B) /1987年
  • 全長×全幅×全高: 4,235 × 1,800 × 1,805mm
  • ホイールベース: 2,400mm
  • トレッド:  前/1,530mm 後/1,535mm
  • 最低地上高: 205mm
  • 車両重量: 1,960kg
  • 乗車定員:  2 (4)名
  • 形式: 水冷直列6 気筒OHV ディーゼル
  • 総排気量: 4,169cc
  • 内径×行程: 96.0 × 96.0mm
  • 圧縮比:  22.7:1
  • 最高出力: 125PS/4,000rpm
  • 最大トルク: 27.8kgm/2,000rpm
  • 燃料/タンク容量: 軽油/80L
  • トランスミッション形式: 5速MT
  • 駆動方式: パートタイム4 × 4
  • 副変速比:  Hi : 1.000 Lo : 2.020
  • 最終減速比: 4.111
  • ステアリング形式: ボール・ナット式(パワーアシスト付き)
  • サスペンション 前: リジッドアクスル式コイルスプリング
  • サスペンション 後: リジッドアクスル式コイルスプリング
  • 主ブレーキ:  前: ベンチレーテッドディスク 後: ベンチレーテッドディスク
  • タイヤサイズ: 215/80R16
  • 車両本体価格: 2,567,000円(当時)