2006年 HISTORIC4x4GRAFFITI掲載

4×4 ユーザーの裾野を広げた立て役者

大排気量ガソリンエンジンの1ナンバー車しかなかった4×4市場に

わずか360ccの軽自動車が参入することで大きな異変が起こった

売れ行きが悪かった場合のリスクも事前に検討されたというLJ10だが

メーカーの予想に反して個人ユーザーから熱烈な支持を得たのである

メーカーの予想を超えた売れ行き
特に個人ユーザーに人気だった

 初代ジムニーであるLJ10は、1970年に発売されると、その年のうちに5,000台以上が販売され、一躍国産4×4のトップセラーとして当時の4×4マーケットに異変を巻き起こした。ジムニー登場以前の日本の4×4は、三菱のジープ、トヨタのランドクルーザー、日産のパトロールと、いずれも出費のかさむ1ナンバーの大排気量ガソリン車だった。そのため維持費の安い軽自動車で、しかも本格的な4×4として登場したジムニーに、個人ユーザーが飛びついたのだ。
 「空冷ジムニー」と呼ばれたLJ10は、’71年1月を境に1型と2型に分けられる。発売後わずか9か月でのマイナーチェンジは異例のこと。それだけ反響の大きいクルマだったことが分かる。LJ10の発売前、スズキでは月産200台を目標としていた。ハンドメイドでも対応可能な数字で、もし売れ行きが悪くてもリスクが少ないとの判断だった。しかし、実際に販売を開始すると、目標を3倍も上回る台数が売れた。しかも農耕や土木作業などの用途を見込んで作ったにもかかわらず、乗用目的のユーザーの方が多いことが分かった。乗用車としては未完成の部分も多かったため、慌てて普通のクルマに近づけようと、マイナーチェンジを行った、というわけだ。
 取材車両は’71年式の2型。空冷2ストローク・360ccのエンジンや、2速3軸式トランスファーを備えたパートタイム4×4、前後リーフ・リジッドのサスペンション、ソフトトップを備えたフルオープン可能なボディーなど、基本的な部分は1型と変わらないものの、細かい変更点は多い。エンジンの最高出力は25PSから27PSへアップ。最大トルクも3.4kg-mから3.7kg-mに向上している。キャリイの流用だったトランスミッションは、トランスファーを含めてギア比が見直され、その結果カタログの登坂力は27.5度から33度へと大幅に向上した。その他、幌のドアがファスナ―式のドアカーテンからフレームを持った幌ドアに変わったり、グローブボックスやパーキングブレーキにキーロック機構が付いたり、タイヤが6PRからジムニー専用と言える4PRに変更されたり、燃焼式ヒーターがオプション設定されたり…と、一般ユーザーの使い勝手は飛躍的に向上した。

オンロードでは非力だが
オフロードでは頼もしい走り

 幌ドアを開けて運転席に乗り込み、2点式のシートベルトを締める。ダッシュボード右端のイグニッションにキーを差し込み、チョークを引いてスターターを回すと、ポロロンポロロン…と、例の2ストジムニーの軽いサウンドが響いた。
 この空冷2ストロークエンジンは、27PSを6,000rpmという高回転で引き出すオートバイ的なエンジンだ。しかし出力もトルクも、数値的には大したことがなく、実際にオンロードでは非力さを痛感することが多い。速度計には120km/hまで目盛りがあるが、80km/hを出すのも辛い。
 いい天気だからフルオープンにしてオフロードを走ることになった。しかしこの幌の脱着は骨の折れる作業だった。幌骨の構造が複雑な上に、サイドレールやセンターピラーも外さなくてはならず、気軽にオープンを楽しめるようなものではない。結局取り外しには、3人掛かりで30分近くかかってしまった。
 オンロードでは非力なエンジンだが、オフロードではなかなかの走りを見せる。ローレンジもファイナルも低いうえ、車重が600kgしかないのだ。当時のランクルやパトロール、そしてジープまでがスタックしてしまうような泥濘地や砂地を、LJ10なら、歩くような速度で、トコトコとクリアしてしまうことも可能なのだ。おもちゃのような4×4だが、その走破性は本格的だった。

たった27PS しかないエンジンだけに、スピードを出すのは苦手。身体全体に風を感じながら、のんびりとコロがすのが、正し乗り方なのだろう。

インパネは至ってシンプル。 鉄板剥き出しで、 ラジオもヒーターもない。 当然パワステもないが、 車重が軽いためハンドルは軽々回せる。

幌骨の構成は複雑。オープンにするためにはサイドレールやセンターピラーも一緒に取り外さなければならない。

当時の軽自動車規格に合わせ、排気量は359cc。2気筒の空冷2ストロークエンジンで、アルミシリンダーを採用。コンパクトなので整備性も良い。

後部シートへのアクセスはリアゲートから。乗り降りのための折り畳みステップがリアゲート裏に備わる。

後部シートは1名分のみ用意される。前向き乗車で、2型からはアシストグリップが装備されるようになった。

運転席はヘッドレスト一体のハイバックタイプ。助手席はヘッドレストがない。生地はもちろんビニールだ。

LJ20 (1972-1976)

排気量は360ccのまま、空冷から水冷に変わったLJ20。幌とバンの2タイプがあり、バンモデルには乗り心地向上のためリプタイヤが設定された。

SJ10 (1976-1981)

軽自動車規格の変更に伴い、排気量が550ccにスケールアップされたSJ10。車体サイズの枠も拡大されたので、スペアタイヤを車外に設置。

SJ20 (1977-1982)

ジムニー初の小型貨物車。SJ10と同じボディーに、41PSを発生する797cc直列4気筒OHCの4ストロークエンジンが搭載された。

発売わずか9か月でマイナーチェンジ
それほど個人ユーザーの反響が大きかった

SPECIFICATIONS

  • 車名/ 年式 スズキ・ジムニー(LJ10)/1971 年
  • 全長×全幅×全高 2,995 × 1,295 × 1,670mm
  • ホイールベース 1,930mm
  • トレッド 前/1,100mm 後/1,100mm
  • 最低地上高 235mm
  • 車両重量 600kg
  • 乗車定員 3名
  • 形式 空冷直列2気筒2ストロークガソリン
  • 総排気量 359cc
  • 内径×行程 61.0 × 61.5mm
  • 圧縮比 5.8 : 1
  • 最高出力 27PS/6,000rpm
  • 最大トルク 3.7kgm/5,000rpm
  • 燃料/ タンク容量 ガソリン/26l
  • トランスミッション形式 3 速MT
  • 変速比 1速:3.967 / 2速:2.388 / 3速:1.572 / 4速:1.000 / 後退:3.967
  • 駆動方式 パートタイム4×4
  • 副変速比 Hi : 1.714 Lo : 3.012
  • 最終減速比 5.667
  • ステアリング形式 ボール・ナット
  • サスペンション 前: リジッドアクスル式リーフスプリング 
  • サスペンション 後: リジッドアクスル式リーフスプリング
  • 主ブレーキ 前: ドラム 後: ドラム
  • タイヤサイズ 6.00-16-4PRLT
  • 車両本体価格 484,000 円(当時)