2006年 HISTORIC4x4GRAFFITI掲載

世界中に轍を残した名車の二代目

ベストセラーとなったランドローバー・シリーズの後を受け
専門デザイナーによる新たなボディーが与えられたシリーズⅡ
基本的なデザインは初代から変わることはなかったが
数多くのバリエーションを生みだしたのがこのシリーズだ

戦後の経済復興を担った
世界的なロングセラー4×4

 ランドローバーの元祖、シリーズⅠは、戦後イギリス政府が行った外貨獲得のための「輸出製品優遇政策」が生みだした実用車だった。ローバーの技術者は、MB/GPWを研究し、フレームやアクスルを流用してプロトタイプを製作。1948年のアムステルダムモーターショーに送り出した。その後市販されたシリーズⅠは、瞬く間にベストセラーカーとなり、同社の経営危機、ひいてはイギリス経済の建て直しに大きく貢献したのである。

 誕生から10年の間に、シリーズⅠは21万台以上を生産。その70%以上が150か国を超える国々に輸出された。世界中に残るランドローバー伝説は、このシリーズⅠが作ったと言っても過言ではない。

 生産開始から11年目、ベストセラーになったシリーズⅠの後を受け、専門デザイナーを起用して新たなボディーが与えられたのがシリーズⅡだ。とは言え、実際には基本設計を重視し、ディテールに手を加えた程度。ボディー全幅が1.5インチほどワイドになり、フロントフェンダーからリアまで、ボディーサイドが全体的にふっくらしたのが最大の変更点だった。

 メカニズムでは、前輪にフリーハブを採用するとともに、ガソリンエンジンを2.3リッターに拡大。最高出力は従来比40%アップの77bhp 、最大トルクは17.1kg-mとなった。また、全幅の拡大により、ホイール周りに余裕ができ、最小回転直径は1.5mも小さくなった。

豊富なバリエーションを展開
取材車は北米仕様の109インチ

 取材したシリーズⅡAは、左ハンドル仕様の109インチステーションワゴン。’66年生産の北米輸出モデルだ。二重になったルーフは、炎天下での断熱性を高めるもので、トロピカルルーフと呼ばれた。大きなルーフキャリアともども、歴とした純正パーツだ。

 イグニッションキーを捻った後、スタータースイッチを押し込むと、4気筒OHVエンジンは一発で目覚めた。回転が安定するのを待つ間、シフトノブをいじる。シフトパターンは中央前方が1速、手前が2速…の順で4速。リバースは左前方になる。ペダルはかなり左寄りで、下半身を捻った状態を強いられる。かなり違和感がある乗車姿勢だ。

バーベキューの焼き網になると言われたラジエターグリル。シリーズⅠと違ってヘッドランプが飛び出した形状となる。

ボディー端部に独特の結晶模様が浮き出た亜鉛メッキ板が使用される。リベット結合の多さも、アルミボディーならでは。

車名が書かれた楕円の下に、駆動方式と車体形状が表記されたプレート。LANDROVER とは陸の海賊船の意味。

運転には少々コツが必要
ゆったり田舎道を走るのが似合う

 ミッションの1速と2速には、シンクロメッシュ機構がない。耳を頼りにアクセルペダルを煽り、ダブルクラッチで回転を合わせなければならない。特に2速が引っかかりがちで、安直なシフトアップを行うと、ギアが弾かれるいやな振動と音によって、「しっかり運転してね」と諭されてしまう。感心したのはブレーキの利きが良いこと。バキュームのサーボが確実な制動力を生むので、安心して速度を上げることができた。

 発進加速はのんびりしたもので、ゴーストップが頻繁な日本の道路事情では流れに乗りにくい。3速の守備範囲が広く、20〜60km/hまでをカバーしてくれるのが救いだ。せせこましい都会より、カントリーロードが似合うクルマと言えよう。

 エンジン回転を耳で聞き分け、機嫌を取りながら車速を上げるコツさえ修得できれば、ギアチェンジを減らした至極ルーズな運転が可能。右手で行うシフトチェンジも、慣れてきたら意識せずに行えた。

全てにおいて完璧ではないが欠点もまた味わいのひとつ

 真っ赤なボディーに映える紅葉をバックに、オフロードをトコトコと移動する。路面の起伏は穏やかだが、湿った草の上は思いの外滑りやすく、土もフカフカだったので、迷わず四駆にシフトする。

 ミッションレバーの根本にある短めのノブを引き上げれば前輪に駆動力が伝わる。さらに助手席側にある長めのレバーを手前に引くとローレンジ。1速なら40.688のギア比となり、それこそ歩くより遅い速度でのクロウリングが可能となる。

 バックするために後ろを振り向くと、後方視界の良さに驚かされた。各ピラーが細い上、ウインドゥ面積も広いので、簡単に四方を見渡すことができる。ボディー形状もスクエアなので、見切りは楽だ。ただし、最小回転半径は約6.9mもあるため、取り回しには注意が必要。パワステに慣れた人が乗ると、思ったより大回りしてしまい、重いハンドルと格闘しながらの切り返しをさせられるに違いない。

 普段は最新のSUVに乗る機会が多い身には、ランドローバー・シリーズⅡAは、さすがに全てにおいて完璧というわけではなかった。大きなショックを伴う駆動系のバックラッシュや、窮屈なドライビングポジション、各部のガタつきやキシミ音…。現代のクルマからすれば、到底許されるレベルのものではない。しかし、このモデルが40年も昔に誕生し、しかも、60年も昔に開発されたクルマとほとんど変わっていないという事実を知る人にとって、むしろネガティブな要素がその程度しかないことの方が驚きだ。

 普通の人にとってはネガティブな要素も、シリーズⅡAを生涯の伴侶とする覚悟を決めた人にとっては、ハンドルを握って野に遊べば忘れられる程度のもの。そして、各部に現れた経年変化もまた、味わいを深める要素となるはずだ。

右からハイ/ロー切り替え、フロントドライブ、オーバードライブ、トランスミッション、サイドブレーキの各レバーが並ぶ。

排気量は小さいが、フラットなトルクを生み出す直4ガソリンエンジン。シリーズⅡには後に2.6リッター6気筒も搭載された。

取材車は北米仕様のため左ハンドル。ハンドルを握ると下半身が左によじれてしまうほど、ペダルが左に寄っている。

感覚を研ぎ澄まし、クルマと対話しながら乗る。それがまた楽しいのだ。

右の丸いドラムは推進軸制動のセンターブレーキ。左の角張ったユニットは全てのギアポジションで有効なオーバードライブ。

リアのリーフは12枚組。下の2枚は厚く、端部がテーパー状に処理されている。重量物の積載を考慮した設計だ。

フロントのリーフスプリングは11枚組。枚数は多いが全てのリーフが薄く、しなやかにたわんで路面に追従する。

LAND ROVER SERIES

ランドローバー・シリーズⅠ(1949年)

全長×全幅×全高:4,016 × 1,778 × 1,942(mm)
エンジン:水冷直列4気筒SOHCガソリン
総排気量:2,464cc
最高出力:106PS/4,800rpm
最大トルク:18.4kg-m/3,000rpm

世界中に伝説を残した機械馬

MB/GPW の機動性に着目したローバー社が、農作業向けに開発したのがランドローバーの始まり。最初の市販車となったシリーズⅠは、1948年にデビューした。鋼板不足に対応するため、ボディーパネルにアルミを採用。ゆえにプレスなしの平板な構成、リベット止めの車体設計となった。エンジンは1.6リッターの直4Fヘッドで、極低回転から大トルクを発生。初期型はセンターデフ代わりにワンウェイクラッチを内蔵した、簡易フルタイム4×4を採用していた。当時の英国の外貨獲得政策に乗り、積極的に輸出を展開。’58年まで、21万台以上を生産した。

LAND ROVER SERIESⅡA

SPECIFICATIONS

  • 車名/年式: ランドローバー・シリーズⅡA/1966年
  • 全長×全幅×全高: 4,580 × 1,670 × 2,160mm
  • ホイールベース: 2,373mm
  • トレッド:  前/1,485mm 後/1,485mm
  • 車両重量: 1,950kg
  • 乗車定員: 6 (10)名
  • 形式: 水冷直列4気筒OHV
  • 総排気量: 2,286cc
  • 内径×行程: 90.47 × 88.8mm
  • 圧縮比:  7.0 : 1
  • 最高出力: 77bhp/4,250rpm
  • 最大トルク: 17.0kg-m/2,500rpm
  • 燃料/タンク容量: 無鉛レギュラーガソリン/45L
  • トランスミッション形式: 4速MT
  • 変速比:  1 速:2.996 / 2 速:2.043 / 3 速:1.377 / 4 速:1.000 / 後退:2.547
  • 駆動方式: パートタイム4×4
  • 副変速比:  Hi : 1.148 Lo : 2.888
  • 最終減速比: 4.700
  • ステアリング形式: ラック&ピニオン
  • サスペンション 前: リジッドアクスル式リーフスプリング 
  • サスペンション 後: リジッドアクスル式リーフスプリング
  • 主ブレーキ:  前: 2リーディング 後: リーディングトレーリング
  • タイヤサイズ: 235/85R15